お父さん、お母さん、私は感謝しています。
私を育てるのは大変だったでしょう、つらいこともあったでしょう。

こんな親でごめんねと謝られたこともありましたね。
でも、お父さんもお母さんも謝ることなんてないの。

大好き、本当に、大好き。


だからずっと、二人は二人のままでいて。





今度ね、私、三年くらい旅行に行く事になったの。
帰ってきたら、帰ってきたらね、色んな話を聞いて欲しい。




お父さん、お母さん、ありがとうございます。

私を産んでくれて、本当に、感謝しています。












未来降誕












大量に敷かれた干草、少しの災害で崩れ落ちそうな木の小屋。
花瓶に生けられた真っ白な百合の花が、香りを惜しげもなく散らしていた。


「お久し振りですね。」


目の前に立つのは、真っ白で豊かな布に身を包んだ朝比奈さんの姿。

お久し振りです、あなたが未来に帰ってしまってから三年も過ぎてしまいましたね。
と、そんなことを言っている場合ではない。


「あ、あの、ここってどこ、ですか?」

「ふふ、教えない。」


ああ相変わらず可愛らしい笑顔を向けて下さる方だ。


まあいいか、ここがどこだって。
どうせこれは、夢の中の世界。

何故夢だと断言出来るのかって?

朝比奈さんの背には大きな白い羽、頭の上に浮かぶのは金の輪。


判断材料はこれだけで十分だろう。





干草に引かれた、白いシーツ。
その上に朝比奈さんは座って、傍らにある花瓶から百合の花を一輪、抜き取った。


「朝比奈さん?」


右手には百合の花、左手には小さな金色の光。


「今日は、あたしだけなんです。」


何が言いたいのだろう、禁則事項にでも関わるんだろうか。


「未来は、定められました。」


一歩踏み出せばぎし、と板の目が音を立てる。


ぎし、ぎし、ぎし、

手を引かれ、俺は干草の即席ベッドに転がされた。


「ありがとう、キョンくん。」


左手の小さな光は俺の中に吸い込まれ、朝比奈さんは右手に持っていた百合を、俺の上に置いた。



横目で見た木の扉の、ドアノブが動いた瞬間。
一瞬にして、朝比奈さんは細かな粒子となって消えた。












扉を、開けたのは。












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目が覚めたら、横には古泉の姿。
眩しいほどの蛍光灯が病室を照らす。
体が、軽い。


「女の子、でしたよ。」

「…………うん、」


この部屋には俺と、古泉と、小さな、小さな。


「ありがとう、ございます。」

「どうってことねえよ。」


今にも泣きそうな、でも嬉しそうな顔で。
ああもう、折角のハンサム面が台無しじゃねえか。


「抱いてあげて下さいよ。」

「ん、」


腕に抱いた体は小さくて、柔らかくて。
すぐに壊れそうな、愛しい存在。

すやすやと大人しく眠る姿はまだくしゃくしゃの顔をしている。
可愛くないはずのその顔が、とても、可愛らしい。


「お前も、抱いてやれよ。親なんだからな。」


そっと、起こさないように移動させた子供はむずがることもなくすっぽりと腕に収まった。


「お母さんとお父さんですよー、分かりますかー?」

「キモい、黙れ、誰がお母さんだ。」


柔らかく清潔なタオルに包まれた、小さな赤ん坊の顔を覗き込んで古泉は顔を綻ばせる。


「あなたが産んだんですから、あなたがお母さんなのは間違いないでしょう?」

「……う、」


確かに間違いではない、間違いではないのだが…!


「どんな子に育ってくれるでしょうかね?」

「さあな。」


本当は、分かってるんだ。
断言出来るぞ、この子は絶対にお前似の美人になる。


「名前、どうします?」

「もう決めてある。」


僕に相談もなしにですか、ひどいですね、とか言いながらも古泉は笑みを絶やさない。


「あなたが決めるなら、きっと素敵な名前なんでしょうけど。」

「絶対に可愛らしい子に育つぞ。可愛らしく、素直な子に。」


どうしてですか、と問うイケメンな夫に俺は決めたばかりの子供の名を告げた。


「それは……将来が楽しみですね。」

「だろう?」


きっといつか、全ての真実を知る日が来るだろう。
不甲斐ない両親かも知れないが、よろしくな。



俺たちは二人、顔を見合わせて眠る子供に呼びかけた。





「「みくる、」」











きっときっと、優しい子に。




















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ごめんなさい、調子乗りました。









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