星空を連れてどこまでも。
上へ、上へ、振り返ることなく。

そうしたら望む未来に辿り着けるだろうか、望む世界はあるのだろうか。


さあ行こう、愛しい人よ。
さあ行こう、怖れることなどない。


空の向こうにはきっと、かみさまにさえ分からない場所がある。







探しに行こう。
もう、失いはしないから。




ソアーヴェ


ぽつぽつと明かりの灯る広く暗い廊下。
強化型プラスチック越しに見えるのは星の海、広がる宇宙空間と、第五惑星。


「木星コロニー、ですか。」


プラスチックに触れている俺の両手に、重なったのはほんの少し大きな手。
手袋越しの体温が心地良く感じた。


「幕僚総長。」

「どうぞ、いつものように呼んで下さい。ここには僕たちしかいませんよ。」


確かにそうなんだが、監視カメラにはばっちりだぞ。
…声って入るんだっけ?

とりあえずこの抱きついているように見えなくもない状況を何とかしたいんだがな。


「お断りします。もう三日も、あなたに触れてない。」


首筋に生温い息を吹きかけられ、思わず肩を竦める。
あ、こら、笑うな。


「十二時間後に会う約束してただろうか。」

「耐えられません。」


重ねられていた手が離れたかと思うと、長い両腕が体に巻きついた。
がっちりと後ろから抱きしめられたまま、身動きが取れない。

だから、ばっちりと映ってるんだって!カメラに!!


「しばらく充電させて下さいよ……ね?」

「…うっ、」


俺は答えを返さず、黙り込んでプラスチックの窓に額を押し付けた。


まだ作業が始まったばかりの木星コロニーの建造。
緑溢れる美しい惑星に、なればいい。


「こっち向いて下さい。」

「嫌だ。」


後ろからの拗ねたような雰囲気に少しだけ笑う。


「十二時間後までお預けです。出直してきてくださいね、幕僚総長。」


含み笑いと一緒に言葉を告げれば大きなため息と共に腕が離れていった。


「仕方ないですね。」

「仕方ないですよ。」


古泉の方に向き直ると同時に、左手を掬い上げられて手袋を外された。


「何するんですか。」

「いえ、」


伏せられた瞼、縁取るのは淡い色の睫毛。
長い髪が手の甲をくすぐって、


「っ古泉!」


唇を落とされたのは薬指の付け根。


「そのキスマークが消える前に、指輪をプレゼントしましょう。」


それでは、と満面の笑みを浮かべて去って行く古泉の背中を見つめながら俺はただ固まっていた。


多分、顔は赤い。
カメラに映らないように少し俯きつつ古泉の行った方向と逆の方へ体を向けた。


「…………。」

「あ、見つかったわみくるちゃん!」

「ふえ、ご、ごめんなさい、見るつもりは!」

「ユニーク。」


長門の手には端末。
間抜けな音が響き、録画が終わったことを全員に告げた。


「逃げるわよ!」

「キョンくんごめんなさぁい!」

「……。」


えーっと、どういうことだ。

撮られた?


どこから?





―――――どこまで?





「ちょっと待て!待たなくてもいいから端末は置いて行け!!」

「嫌よ!休憩時間に全艦に流してやるんだから!!」


それが嫌だから俺は今必死に叫んでいるんだが。


「やめろ、むしろ止めて下さい涼宮閣下!!」

「いーやーよー!公認カップルの生プロポーズ映像よ?
すっごいスクープじゃないの!!」


何がスクープだ、何が!








この後、一時間ほど鬼ごっこが続いたのだが結局捕まえることは出来ず。
本当に休憩時間中に流された映像は古泉の登場から退場までを全て記録していて、居たたまれなさが更に増した。


もちろん、放送後は部屋にこもりっぱなしである。
何とでも言え、恥ずかしい思いはしたくない。

いくら公認でも、だ!


「明日はきっと食堂に行ったらパーティーが始まりますね。」

「勘弁してくれ!」













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いつでも苦労人。









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