フェルヴォーレ
神サマ。
僕だけの神サマ。
抱き寄せた体は驚くほどに細い。
女性並なんじゃなかろうかと重いながら腰を強く引き寄せる。
「こら、離せ。」
ばしばしと結構な力で頭を叩かれるが手を解くことはしない。
青い軍服に顔を埋め、ひたすら黙っていると、諦めたのか彼の動きが止まった。
昨晩触れたばかりの体。
この服の下には白い肌と、無数の赤い跡。
立ったままの彼の手を思い切り引っ張ると、バランスを崩して僕の膝の間に座るように倒れこんだ。
「うわっ!」
きちんと食べているのは知っているけれど、相変わらず軽い。
「離せ、馬鹿!」
「嫌です。」
白い項が僕の目の前に晒されて。
思わず唇を寄せれば抱きこんだ体がひとつ跳ねた。
「…可愛いです。」
「うるさい。」
ああ本当に可愛いな。
彼は俯いているが、髪が短い所為で真っ赤に染まった顔は隠しきれていない。
「癒されますね。」
「お前は一回黙れ。」
未だに初々しい反応を返してくれる彼が愛おしくて仕方ない。
まあ、どんな反応だったとしてもきっと可愛いのには変わりないけれど。
三百年も、この人を独りにしてしまった。
ずっとずっとつらい思いをさせてきてしまった。
だから、嫌というほどに甘やかすのだ。
「好きです、愛してるんです。」
「………。」
―――――pipi、
彼が声を発することはなく、響いたのは間抜けな機械音。
「な、なっ、」
「…気にせず続けて。」
抱きしめた彼の向こう側に、端末を持った長門さんの姿。
なるほど、撮ったんですね。
「お言葉に甘えて。」
逃げ出さないように強く、腕に力を込めた。
「待て長門!そして離せ古泉っ!!」
「だから、嫌ですと言っているでしょう?」
首だけで振り返った彼の赤い頬に、ひとつ口付け。
「今は僕のことだけ考えていて下さい。」
「ん、う、」
乱暴に奪った甘い、甘い。
唇を割り開き、奥にある舌を引きずり出して吸い上げると、小さく声が漏れた。
何もかもが、甘い。
「こ、いず、んっ、」
唾液で濡れた赤く艶やかな唇に何度もそれを重ねる。
ああ、止まらない。
「可愛い。」
誰よりも、愛おしい。
「ふあ、んうっ!」
漏れ出す吐息さえもを飲み込んで、ひたすらに貪る。
さすがに苦しくなったのか、彼の細く長い指が僕の髪を思い切り引っ張った。
「……痛い、ですよ?」
「俺が死ぬところだったんだ、我慢しろ。」
苦しさからか、目尻に浮かんでいる涙。
舐めとると彼はびくり、と肩を竦めた。
「あなたを下さい。今すぐ、欲しい。」
「な、」
顔を背ける彼の耳は真っ赤で。
熱を持ったそこを食みながらもう一度囁く。
―――――あなたが、欲しい。
「…………もう、お前のもの、じゃねえか。」
「いいんですか、そんなこと言って。」
煽っているようにしか聞えませんよ、と首筋に口付けて。
「ばーか。」
振り返った彼の頬は未だに真っ赤だったけれど。
吊り上げられた唇の端、挑戦的な瞳。
―――――煽ってるんだよ、気付け。
柔らかな唇が、言葉を紡いだ。
ああもう我慢出来ません!
抱きしめていた彼の体を離し、僕より一回りも細い手首を掴んで金属の扉まで歩いた。
「古泉?」
「……僕の部屋で、いいですね?」
早く、と逸る気持ちを必死に抑えても、きっと余裕があるようになんて見えなくて。
それでもいいかな、なんて思えるのは。
神サマが、僕だけのものでいてくれるから。
「お前の部屋が、いい。」
何てこと言ってくれるんですか!
僕は赤く火照る頬を隠しながら彼の手を思い切り引っ張った。
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次の日の会議にキョンくんは参加しませんでした、とだけ言っておきます。
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