優しくて、柔らかくて、美しく愛おしい記憶。
嬉し泣きで人間はここまで泣けるのかって思った。
暖かな光、甘い香り。
小さな手が、俺の両手を包み込む。
ありがとう、ありがとう。
それは俺が言いたい言葉。
こちらこそ、ありがとう。
俺を幸せにしてくれて、ありがとう。
これからもずっと、美しく愛おしい記憶よ。
浸礼賛美
早朝、不意に香る百合の香。
みくるちゃんがいなくなってしまった次の日のことで。
チャイムが鳴ったから、もうそんな時間なのかと時計を確認するけれど、やっぱり早朝の時間帯で。
非常識ね、なんて呟きながら玄関に向かった。
「おはようございます、涼宮さん。」
古泉君が、笑った。
その後ろにキョンが隠れていて。
ふわ、と強く香る百合の花の。
「お伝えしたいことが、あるんです。」
二人の穏やかな表情。
キョンが、自分のお腹に優しく触れた。
ねえみくるちゃん、あたしの願いは届いたのかしら。
もうすぐ、会えそうよ。
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ポニーテールに白いレースの大きなリボン。
毛先はアイロンで綺麗に巻いて、服はどうしようかしら。
そうね、淡いピンクのワンピースにレモン色のカーディガン、ブーツは編み上げロングの茶色。
可愛い可愛い女の子、大好きな二人の娘。
若干五歳にして少しばかり大人びた物言いをする、人形のように可愛いその子はきっと、もっとずっと美人になるわ。
あたしが保障するし、あいつらだって同意するわね。
あたしたちだけじゃないわ、未来からだって保障されてる。
そんなこと言ったら、あなたのお父さんはびっくりするかしらね。
「今日が何の日か、知ってる?」
ぱっ、と上げられた幼い顔は、満面の笑みを浮かべている。
「おとうさんとおかあさんのトクベツな日!」
ああもう、何て可愛いのかしら。
こんなに可愛い子が生まれるなら、家庭に入るのも悪くはないかもね。
だからってあたしは結婚する気なんてないけれど。
「そう、とっても大切な日。」
いつか知る日が、来るのかしら。
きっと、来るわ。
いつか、いつか。
『どうか、願って。』
『願ったら、会えますから。』
願ったわ、そしたら叶ったの。
どうしてかしらね。
笑顔のみくるちゃんは出会った頃よりも大人びていて。
あたしより一つ年上のみくるちゃんには、もう会えないみたい。
そう考えたら涙が溢れて止まらなかった。
あの、春の日、二人は。
あたし、夢を見たの。
あの美しい春の日の夢。
すごくすごく幸せで、素敵な夢。
あの日は二度と戻らないけど。
「さあみくるちゃん、どの服が気に入った!?」
「えーっと、えーっと、あのオレンジの!」
みくるちゃんが指したのはフリルのふんだんに使われたオレンジのスカートに、黒のシャツ。
「この赤も、おすすめ。」
「有希って結構ゴスロリ好きよね。」
「…好き。」
あたしたちが話してる間にみくるちゃんは並べられた服の一つを手にとって鏡の前に立っている。
あの服だったら髪形はどうしようかしら。
「ツインテール。」
「それ採用!」
毛先のウェーブは柔らかくして、茶色のブーツは黒に変更ね。
「みくるー。」
「ちょっと、せめてチャイムは鳴らしましょうよ!」
玄関から声がして、みくるちゃんは服をその場に置いて走っていった。
残念、もうお迎えか。
「すまんな、ハルヒ、長門。」
「いーのよ、こっちも楽しませてもらったし!」
キョンはみくるちゃんを見て納得したような表情を浮かべる。
「可愛くしてもらいましたね、みくる。」
「うん!」
―――――ほら、
前も昔も、変わらない。
あの日が戻らなくても、変わらない。
SOS団は永久に不滅なのよ!
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今も昔も、ずっと幸せなんだもの。
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