ロッソ・フィーロ
朝日が昇って、数時間。
昼近くになってやっと目が覚めた俺の隣には未だによく眠る古泉の姿。
二人して不健全な休日だな。
大きくあくびを一つ、寝乱れているだろうシャツの衿を少し整えてずり下がりかけた少し大きいジャージを腰まで引き上げた。
くそ、これでも長い。
寝巻をお借りしているため、もちろん今着ているのは古泉のジャージ。
足の長さと身長の違いってやつか、忌ま忌ましい。
眠り続ける古泉を起こさないようにそっとベッドを抜け出して部屋を出た。
目指すは洗面台。
顔を洗わねば目が覚めた気がしないからな。
寒い冬に冷たい水。
完全に目が覚めた、と、思ったのだが。
「何だ、これ。」
見つめるのは自分の手。
正確に言えば左手の小指付け根だ。
細く、長い、糸。
かわいらしく蝶々結びにされたそれの色は赤い。
ぼんやりと昨日の部室での会話(と言ってもハルヒが一方的に話しているだけだが)を、思い出してみた。
『赤い糸とかあるなら見えればいいのに!
そうしたらわざわざ他の人間と付き合わなくても運命の人ってやつを見つけられるじゃない?』
絶対にこれだ。
どう考えてもこの話題がネタ振りだったのだろう。
試しに蝶々結びにされている片方を引っ張ってみたが、外れるどころかびくともしなかった。
だめだこりゃ。
足元に垂れる糸は長く長く続く。
どこに繋がってるのやら。
ハルヒの深層心理とかにも関係していたりするのだろうか。
古泉の意見を借りるとしたら、ハルヒに繋がってる可能性が高いだろうさ。
玄関に続く廊下を見てみたが、外に繋がっているようではない。
糸の向かう先は、今まで俺が寝ていて尚且つ古泉が使用中の寝室。
「ちょっと、待て。」
思わず声が出るほどに俺は動揺しているらしい。
いや、まあ、落ち着け自分考え直せ自分。
そうだ、どうして玄関から外に出る必要がある?
もしかしたら寝室の窓から外に繋がってるかもしれないじゃないか。
いや、まさか、な。
これで古泉と繋がってたら俺は安心すればいいのか落ち込めばいいのか分からない。
ハルヒが感づいてると考えた方がいいのか?
「と、とりあえず確認だ、うん。」
古泉の眠る部屋のドアに手を伸ばした瞬間、糸が引っ張られた。
あれ?
扉を開いたら引きつった笑顔の古泉。
まだ少し眠そうだな。
「これ、は、どうやらあなたに繋がってるようですね。」
ぐい、と糸を引かれる。
俺の小指から、明らかに古泉の小指に繋がった赤い、糸。
「………赤い、糸。」
顔に急激に集まる熱。
やばい、これは、非常に恥ずかしいぞ。
「僕の運命の相手はあなた、ということでいいんですよね?」
言うな馬鹿野郎!
「すごく、嬉しいです。」
あああもう!
心底嬉しそうに笑うな少しは困れ明日は学校だぞ今日俺は家に帰らねばならんのだぞどうにかせねばと思わんのか!
「キョン君は嬉しくないんですか?せっかく恋人と繋がっているというのに。」
「う、うるさい!」
嬉しいだなんて言わないから雰囲気で察しろよな馬鹿泉!!
とりあえず八つ当たりも兼ねて一発、胸元にお見舞いしてやった。
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で、どうすればいいんでしょうか。
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