Only, only to you
今日で三日目。
ちなみに休日を合わせると五日目になる。
何の事か、だって?
俺が古泉の姿を見なかった日数。
ついでに言うと古泉が学校に来なかった日数でもある。
休日は当たり前だがさすがに平日までとなると少々心配だ。
後一日でも休んでみやがれ。
ハルヒ様の機嫌悪化による閉鎖空間勃発につき古泉の睡眠が削られ、下手をすればさらに次の日も休む羽目になるという悪循環無限スパイラルに突入だ。
表向きは風邪を引いた、ということになっている。
だが、それが違うと俺は知っている。
何故かって、そりゃあ本人に聞いたからだ。
何でも、機関での仕事が処理仕切れなくて、部屋に篭ってでも仕上げなければならない事態に陥ってしまったらしい。
書類仕事もやってたんだな、古泉よ。
気苦労、お察しするよ、今回ばかりはな。
で、その話を聞いたのは五日ばかり前になるわけだ。
五日もかかる書類仕事ってあるのか?
多分、相当な量なのだろう。
俺なんかが想像も出来ないほど、な。
さてさすがに団長様も心配になったらしいので、俺が様子でも見てくると言い置いて部活動を休んだ。
特別休暇だとさ。
出来れば古泉のためじゃなく自分のために使いたかったさ。
もしくは朝比奈さんだな、うん。
どうして古泉の家を俺が知っているかは割愛だ。
察してくれ、説明はしたくない。
つい先日渡されたばかりの合鍵を使ってそっと玄関に滑り込む。
どうせなら驚かせてやろうじゃないか。
俺の手を患わせやがった仕返しにな。
と、そう思ったのだが。
「寝てる、のか。」
リビングはとてもじゃないが見れたものではない。
ノートパソコンは電源が切られただけで開きっぱなしだわコードは繋がりっぱなしだわで。
一部にまとめられたのがきっと完成書類で後は没書類か。
ならば足の踏み場もないほどに散らかった紙は全て処分品ということになる。
とんだ資源の無駄遣いだな。
埃を被ったキッチンにごみ箱に積み重なったコンビニ弁当とカップ麺の空容器。
絵に書いたような不健康生活だ。
きっと冷蔵庫には栄養ドリンクと品質保持期限のとうに過ぎた調味料ぐらいしか入ってないだろう。
幾分か片付いている机の上に眼鏡のケースを見つけて首を捻った。
そこでやっとソファでぐったりと眠る家主の姿をしっかりと目にする。
乱れたシャツにスラックス。
スーツはシワだらけで床に落ちている。
寝癖であちこち跳ねた髪、相当疲れていたのだろう、ノンフレームの眼鏡は装着されたまま。
目の下には濃いクマがあり、何と珍しいことに不精髭さえ生えていた。
残業明けのサラリーマン風情だな、古泉。
お前は本当に高校生かと問い詰めたくなる。
しかし、眼鏡なんてするんだな。
髭も、俺なんて剃るどころか全く見当たらないってのに。
……見慣れない姿にときめくだなんて乙女思考全開だ。
とりあえず起きる前に口付けをひとつ。
触れるだけのそれでも、ざり、という感触が微かに。
不思議な気分だ、と笑みが零れるのをそのままに、俺は腕まくりをした。
さて、部屋の掃除を始めるとするか。
それが終わったら買い出しに行って、何か夕食を作ろう。
きっとそのころには古泉も起き出すはず。
団長様の機嫌を損ねないためにも、早く本調子に戻ってくれないと困るからな!
俺は目が覚めて驚きに硬直するだろう古泉の姿を思い浮かべてほくそ笑んだ。
一言目は「お疲れ様」、かな?
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眼鏡は百円均一の老眼鏡でした。
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