僕の神サマ


「僕の神様はあなたですよ。」


そう言って、古泉は胡散臭い笑みを浮かべた。

俺の返事は三点リーダをたっぷり使った揚句に一文字だけ。


「…………………………………は?」


これに尽きる。
しかし古泉には何の効果もなかったらしい。
大袈裟に肩を竦めて、ひどいですね、なんてぼやいてやがる。

いや、本当に何が言いたかったんですか。


「お前たちの神様はハルヒだろ?」


他ならぬお前自身がそう言ったんじゃないか。


「ええ、もちろん僕たちの神は涼宮さんなのですが。」


思いっ切り矛盾してんじゃねぇか。
こいつはさっき何と言った?

俺が神?古泉の?何故?

あれか、俺の聞き間違いか。


きっとあれだ。
ほら、俺はハルヒの鍵だとかそんな話だろう。


神と鍵。


うん、どうにも聞き間違えそうじゃないか。


「まどろっこしい説明はいらん。意味が分かるように、出来るだけ簡潔に話せ。」

「と、言われましてもね。」


まあ、お前はデフォルトで説明好きのようだからな。
いや、デフォルトなんて知るか、そんなもの。


「機関にとっての神は当たり前の如く涼宮さんですが、僕自身にとってはあなたなんですよ。」


すまん、簡潔すぎてますます分からん。
どうして俺がお前の神になるんだ。

俺には世界を望み通りに変えることなんて出来ん。
もちろん、閉鎖空間を生み出すことだってな。


「今から話しますよ。」


さっさと話せ。
前置きなんぞいらんと言っているだろう。

古泉は苦笑を返し、そして静かに目を閉じた。

俺と古泉以外、誰もいない夕方の部室。
オレンジ色の光が彼奴の長い睫毛を照らしていた。

ちくしょう、美形め忌ま忌ましい。


「もう半年も前ですね。あなたは僕に、疲れているんだろう、と聞きました。僕は驚きましたね。
誰にも分からないように笑顔を作っていたのに、あなたには分かってしまった。
ポーカーフェイス、と言っていいのでしょうか。
とにかく、笑顔は癖のようなもので、尚且つ取り柄みたいなものだったので。

心底、驚きましたよ。」


―――――ああ、


俺は一つの出来事を思い出す。

笑い方が少しぎこちなかった古泉に、疲れているんだろう?きちんと休めよと声をかけた。
あの時の表情は普段、見ることなどまずない珍しい表情だったな。

こいつもこんな顔するのか、と思ったね。


「それに何の関係があるんだ?」


まさか、読めるはずない表情の変化を読んだから俺は神なんだ、なんて馬鹿げた考えじゃないだろうな。


「一つのきっかけ、ですよ。まだまだありますが、長い話はお嫌いでしょう?」


勿論だ。


「最終的な結論だけを申し上げましょう。」


最初からそうしろ。

何故か古泉は帰り支度を始める。
何だ、帰りながら話すつもりなのか?





「……あなたが、好きです。」





俺の時間は、見事に全停止した。


「こ、いずみ?」

「あなたが好きだからこそ、あなたは神なのです。
僕はいつだって、一番にあなたのことを想っていますから。」


どういうことだ、思考が上手くまとまらない。

古泉は鞄を持って部室から出て行った。



扉が閉まる直前に、小さな声で言葉を残して。



「愛してますよ、僕の神様、あなたただけを。」











ああ何で顔が熱いんだよ馬鹿野郎!













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今日が金曜日でよかった!!









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