エウカリスト
「後は俺がやるよ。」
仲間たちは頭を下げて俺の通る道を作る。
冷たいコンクリートの床を歩くと、綺麗に足音が響いた。
履いている革靴に倒れ付したまま動かない男の血がこびりつく。
あーあ、これ高かったのに。
ボスにそれを告げたらきっと新しいのを買ってあげましょう、と言われるのがオチなので伝えるつもりはない。
新調すっかな。
「なあ、言うつもり、ないのか?」
男の前髪を掴み、顔を引き上げて出来るだけ優しく囁く。
びくり、と肩を跳ね上げる姿がひどく哀れで。
ああ可哀相だなあなんて思いながら頬が緩むのを感じた。
簡単な殴打なんかじゃ何も吐きはしない。
久し振りに骨のあるやつだからな、何をしてやろうか。
「どこのファミリーに雇われた?」
ゆるゆると首を振る男は口を閉ざしたまま。
顔面は幾度にも渡る殴打で腫れ上がって、いい男が台無しだ。
ま、ボスの顔を傷付けたんだから、当然の報いだよな。
「最近さ、昔日本で行われてたっていう拷問法聞いたんだ。あと魔女狩りの裁判の話も。」
どうせなら部屋に案内して差し上げようか。
「喜べ、特別待遇だ。」
コンクリートに、数個の蛍光灯。
奥まった場所には鉄の扉。
部下たちによって開かれたそこから光りが溢れ出した。
血生臭い香りと、様々な拷問器具の並ぶ広い部屋。
ひっ、と男が恐怖に引きつった声を上げた。
「さて始めようか、殺し屋さん。俺たちのボスを傷付けた罪、償ってもらうぞ。」
これが俺の愛情表現。
捻じ曲がった愛の伝え方。
俺はな、古泉。
お前みたいにさ、素直に表現なんて出来ないんだ。
だから、お前の知らないところで正直にお前を愛してる。
「どれからがいい?」
両手足に釘を打ち付けるが先か、爪を剥ぎ取るが先か。
無数の棘の中に閉じ込めるか、熱した油の中に手を突っ込ませてもいいな。
「どれから、始める?」
何も答えなかったからとりあえず俺はペンチを持って男の爪を一枚挟んだ。
このときの俺が、きっと一番いい顔をしてるんだ。
聞えるのは叫び声。
見えるのは痛そうだと言いたげに顔を歪める仲間たち。
駄目だろ?
拷問ってのは笑いながら楽しんでやるもんだ。
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「血の、香りがします。硝煙の香りも。」
「ん、ああ。一人拷問にかけて殺したから。」
つい一時間前かな?
古泉の頬には殺した男が付けた傷。
一筋の切り傷をそっと撫でると柔らかな微笑みが降ってきた。
「僕のため、ですか?」
「当たり前だろ、ボス。」
明日の昼までにはきっと一つのファミリーがなくなってるだろうさ。
だって古泉の命を狙ったんだ、それぐらい覚悟しておいてもらわないと。
「拷問、出来るかな?」
「どうせあなたのことだ。部下に生け捕りでも命じてきたんでしょう?」
そりゃな、全員を殺すよりも効率的でいいじゃないか。
あ、でもボスは殺して来いって言ってあるぞ。
だってトップでふんぞり返ってる奴なんて弱い奴しかいない。
「あれ、僕もですか?」
「んなわけねーだろ、お前は違う。」
俺の生きる意味が、そんな軟弱なはずがない。
俺の命は、そんなに軟弱じゃない。
「ありがとうございます。拷問、見学させてもらっても?」
「俺を怖がったりしないなら、いいさ。」
部下は俺を何か化け物を見るみたいな目で見る。
上の方は結構フレンドリーなのにな。
「怖がるはずがないでしょう、愛しい人。」
「そうかい。」
俺だって愛してるさ、とは口に出さない。
どうせ、言葉には出来ないんだ。
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拷問狂病みキョン。
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