僕の神サマ 2


不覚だ。
これはもう一生の不覚と言っていい。

自分がここまで鈍いとは思っていなかった。
古泉の告白を聞いて、一日考えて、やっと。


「…どーすりゃいいんだ、」


自分の気持ち?
そんなのとっくに気付いている。

とは言うけれど、実は昨日判明したばかりだ。

自分の今までの行動をよくよく思い出してみれば一目瞭然だった。


詳細は……何も言うまい。
これは俺の胸に秘めておこう。


「俺、は、古泉、が、好き。」


一気に顔に熱が集中する。
何だこれ、恥ずかしすぎる。

落ち着け、止まれ乙女思考よ静まれ心臓。
深呼吸だ、深呼吸。


大丈夫、落ち着いた、俺は落ち着いた。
断じて自己暗示じゃないぞ。



しかし、だ。
告白されて、俺もあいつが…すき、だと、気付いて、………それで、どうする。

古泉は返事を求めなかった。

もし、
そう、もし、だ。

あいつが返事を聞いてこなかったらどうする?
俺から言い出さなきゃならんのか?

とんだ羞恥プレイだ!

ぐるぐると考え続けても答えは見つからず、気付けば日曜夜七時。
どうする、どうすればいい。

俺にポーカーフェイスなんて勿論無理だ。
一日の演技なら大丈夫だろうが、二日とか三日とか続いてみろ。

駄目だ、隠し切れるわけがない。


「キョンくーん!」


ひたすら唸っていると妹が部屋に飛び込んできた。
プライバシーもへったくれもないな、妹よ。


「飯か?」

「ううんーお客さまー!」


ハルヒ……ならわざわざ家まで来ないだろう。

携帯を見ればいつの間にか電源は切れていて、画面は真っ暗だった。
まあ、後で確認すればいいか、と放り出したまま玄関へと向かう。





「お時間、いただけますか?」





お客様の顔を見て、俺はしばらく思考を停止した。






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目の前の男は今、何と言った?


「あなたもお困りでしょう?忘れてくださって結構ですよ。冗談のようなものでしたから。」












俺は古泉と一緒に、家の近くの公園にいた。

玄関先で話すのも悪いからな。
家の中で出来るような話でもないだろうし。

しばらくの沈黙を破ったのは古泉の言葉だった。


「お悩みのようですね。」


誰のせいだと思ってるんだ。


―――――その後に続いたのは、先程の台詞。



「一方的に押し付けてすみません。」


だから、何が言いたいんだこいつは。
理解なんて出来やしない。

お困りでしょう、だって?
そりゃそうだ。

いきなり告白されたら誰もが驚くし、自分の気持ちが分からなかったら困りもするだろう。

忘れてくださってけっこう?
馬鹿言うな。

勝手すぎるんだよ、お前。
散々困らせておいて忘れろだなんて。

冗談だったとか言うならもっとそれらしい顔してろよ。
何で泣きそうなんだよ。
悪いがな、泣きたいのはこっちだよ、古泉。

じわ、と目に涙が溜まって、慌てて下を向いたら地面に零れ落ちた。


「お前は、俺の気持ちなんてどーでもいいんだな。」


思ったよりも低い声が出た。

そうだよ、俺は怒ってる。


「な、泣かないで下さい……、」


泣かせてるのはお前だ、お前。
いらんこと言うから悪いんだろうが。

俺は古泉の鳩尾に拳を入れて叫んだ。
殴られた本人は痛さ故に地面に座り込んでいる。

ざまあみろ、俺だってそんぐらい痛かったんだ。


「忘れていいんだな!全部!!」

「え、」


もう、止まらない。


「お前が告白してきたこと、忘れていいんだな!?」


全部全部、記憶から抹消してやろうか。
いっそ、こいつのことだけ全て忘れないだろうか、自分の頭よ。


「キョン、くん?」


お前までそのあだ名で呼ぶのか。


「じゃあお望み通り忘れてやる!」


知らん、この後のことなんて。
俺は言いたいことだけ言って逃げてやる。





「俺が、お前のことを好きだって気持ちまで全部、忘れてやる!!」





そこまで言って俺は走り出した。

家に逃げ込んで、明日からは口も聞かん。
あいつが何を言ってきても無視だ、徹底無視。

もしくは「忘れた」とでも言い続けてやる。


ハルヒの機嫌?知ったことか。
閉鎖空間でも何にでも行ってしまえ。


「ま、待ってください!」


誰が待つものか!!










―――――この直後に古泉に捕まったことは言うまでもない。













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足が速いなんて反則だ。









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