よろしい、ならば戦争だ
ぐるぐると廻る思考はもう何週目に入ったのかしら。
三年、ううん、四年前からだから、何週なんて可愛らしいものなんかじゃない。
何十週、何百週、もしかしたら何千何万かも知れないわ。
本当はね、敵わないって知ってるの。
でも諦めろ、なんて無理な話なのよ。
もう、行き場がないの。
だからってぶつけるなんて子供っぽいことはしないのよ。
だって、嫌われたくないじゃない。
少しでも、好きでいて欲しいじゃない。
「古泉くん。」
部室にはあたしと古泉くんと、有希の三人。
電気を点けるためにカーテンを閉めたら、有希は本を閉じて立ち上がった。
「あら、帰るの?」
ひとつだけ頷いて、有希は真っ直ぐと部室の外へと消えた。
古泉くんはあたしがカーテンを閉め終えたのを見て電気を二つ、点ける。
ああ、やっぱり人工的な光って嫌いだわ。
「涼宮さん?」
「あ、ごめん。あたしが呼んだんだったわね。」
有希が帰るのに気を取られてたわ。
まあ、フリ、だけど。
みくるちゃんには今日は部活無しって言ってあったし、キョンは言う前に用事があるから帰るって言ったわ。
有希にはあたしが古泉くんと話を始める前に帰って欲しいってお願いしてたし。
だから、この部室にいるのはあたしと古泉くんだけ。
だって仕方がないじゃない。
叫んでも、背伸びしても、あたしは眼中に入ってないの。
そんなの、苦しいじゃない。
だから、戦うのよ。
「古泉くん、あたし、キョンが好きよ。」
「……。」
口を開く前に、あたしは言葉を重ねる。
まだ、あなたには話をさせてあげない。
「恋愛感情、でね。ずっと、そう、四年前にジョン・スミスとしてあたしの前に現れてから。」
暗闇でよく見えなかった顔。
気だるそうな、それでもお人好しな。
何でそこにキョンがいたのか、何で北高の制服を着ていたのか。
あたしには、分からないけれど。
でもあれは、絶対にキョンだったの。
「ずっとずっと好きだったわ。でも、それに気付いたのは半年前。」
遅かったと、思ったわ。
だって、半年前には。
「気付いたときには、あたしはもう失恋してた。
みくるちゃんでも有希でもない、古泉くん、あなたに、取られてた。」
悔しい、と思った。
でも、悲しいとは思わなかった。
裏切られたとも、消えてしまえばいい、とも。
気持ち悪い、とも思わなかったわね。
恋愛感情は、人それぞれなんだから。
でもね、そう、キョンはあたしのものじゃないわ。
でも、取られた、って思ったのよ。
「幸せそうな、嬉しそうなキョンを見るなんて、って思った。
でも、あんまりにも、キョンが綺麗だから。」
幸せそうに、きらきらと光ってた。
あたしじゃ敵わないんだって分かった。
だから、諦めようと思ったんだわ。
でもね、無理なのよ。
「だからね、今は、古泉くんのものでもいいわ。」
好きな人が幸せなのは、あたしも嬉しいから。
「それは、有難うございます。」
「お礼を言うのはまだ早いわよ?」
あたしは今は、って言ったのよ。
「それは、……まだ彼を、諦めていない、と?」
「そうよ。あたしは戦う。見せてあげるわ、あたしの想いってやつ。」
戦況は不利極まりない。
このままじゃ勝利なんて掴めない、可能性は皆無。
でも、敵わないって思ってすぐに身を引くのはいい女のやることじゃないわ。
いい女は、諦めないの。
ぼろぼろに負けて、もうこれ以上戦えないってところまで傷付いて。
そして、やっと諦められるの。
だから不利だろうが眼中になかろうが、関係ないわ。
「簡単に攻略できる相手なんて、つまらないじゃない。」
強がり、だなんて言わせない。
あたしはやってみせるわ。
戦って戦って、戦い抜いてやるの。
「これは戦争。手加減は無用よ!」
勿論です、と言って笑った古泉くんの表情は、今まで見たことのある表情の、どれとも違った。
「僕が、勝たせてもらいましょう。」
いい覚悟ね、副団長。
いつもの古泉くんよりも、好みだわ。
キョンには敵わないけどね。
何かを企むような、底の見えない暗い笑み。
あたしは部室を出る直前に、振り返って叫んだ。
「よろしい、ならば戦争だっ!」
宣戦布告、完了。
―――――戦闘、開始。
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例の曲に影響されました。
ハルヒは強くてカッコいい子!
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