※グロ表現注意














シュレディンガーの猫


「―――――嘘です。」


僕の口が紡ぐ言葉は、そればかり。


「そんなの、嘘です。」

『信じてよ、古泉くんっ!』


嘘だ、嘘だ。
だって、昨日は二人で僕の部屋に入って、食事を作ってテレビを見て、そして。


『嘘じゃないわ、嘘なんかじゃ、ない、わ!』

「いいえ、いいえ、嘘です。嘘ですよ、そんなの。」


同じベッドで、眠った。
僕よりも一回り小さな体を抱きしめて、幸せの中、眠った。


『古泉くん!』





―――――ぷつ、



僕は通話を中断して、未だにベッドで眠る彼の姿を見つめた。

ほら、嘘じゃないか。


涼宮さんは僕を騙して、何をしようとしていたのだろう。
泣き真似までして、手の込んだことだ。

涼宮さんから連絡が来る前、機関から一通のメールが入っていた。
曰く、神の力は消えた、と。

ならば僕は彼女に付き合うことをしなくていいのだ。
優等生を演じなくていい、ありのままの僕でいい。

だから、彼女の嘘に騙されたフリなど、しなくてもいいのだ。


「そんな嘘、すぐにバレますよ。」

「何の、こと、だ?」


白いシーツをまとって、彼がゆっくりと起き上がった。


「あ、目が覚めたんですね。」

「おう。」


彼は、僕の前にいる。
だから彼女の言葉は全て嘘。


全て、嘘。


「学校、どうします?」

「……俺が動けないの知ってて言ってんだろ。」


じとっと恨みがましい目で見られて苦笑を返した。
彼は今日は欠席、と。

まあ、涼宮さんの機嫌をとる必要もなくなったのだし、何も問題はないでしょう。


「では、行ってきますね。」

「飯は準備しとくからな。」


何だか新婚さんみたいですね、とは言わないでおく。
拗ねられたら大変ですからね。



僕は上機嫌で登校した。
きっと周りから見たらいつも通りなのだろうけれど。





―――――嘘。





「昨夜、―――さんが亡くなりました。殺人事件として、警察は捜査をしているようです。」


朝の電話で、涼宮さんは泣いていた。


『キョンが、殺されたって!』


嘘だ、彼は、僕の目の前で眠っていた。
嘘だ、彼は、今僕の家で眠っている。


『顔、誰だか分かんないぐらいぐちゃぐちゃに潰されて、て、でも、生徒手帳が、キョンの……っ!!』


誰がそんなことをするのだろう。
誰が彼を。

いいや、彼は生きている。

今回は随分と細かい設定のようだ。
さすが、涼宮さん。

そう、思っていた。


『今日は部活サボって早く帰って来いよ。』


彼から届いていたメール。



ほら、彼は、生きている。






気付いたら僕の周りで涼宮さんが、朝比奈さんが泣いていて、長門さんが何の感情も映さずに俯いていた。
どうして長門さんは、何も言わない?

ここは、教室じゃない。
僕の記憶は朝から飛び飛びで。

今は、夜?ここは、どこだ?


沢山の花、押しかける取材陣と涙する彼の家族。



正面に構えるのは桐の棺。






―――――どれが、本当で、どれが、嘘?
















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『近くに落ちていた生徒手帳から、身元が判明―――――、』

「意外にちょろいもんだな。」


俺は古泉の家のテレビを付けて、歪む口角を隠しもせずに呟いた。
今頃古泉は俺の通夜にでも出席しているのだろう。

帰ってきたあいつは、俺に何を言うかな?


勝手に盗み見たあいつの携帯メールには、ハルヒの力が消えたとあった。
何だ、つまらない。

折角お膳立てしてやったのに、現状は変わらないまま終わってしまった。
もしかしたら俺が二人に増えるかもしれない、とか思って少し楽しみにしてたのに。


ほとんどの準備は機関側がしてくれた。
俺は用意された人物を殺し、顔面と指紋全てを削ぎとって生徒手帳をポケットにねじ込んだだけ。

後は古泉の家に転がり込んで、ただそこで暮らせばいい。

俺が二人になろうと一人のままだろうと、神様のことなんか気にせずに恋人と暮らせるってわけだ。


最上の幸せじゃないか。


「箱を開けてみないと、何も分からないってな。」


開けたところで見えるのは真っ赤に染まった人為らざるもの、だけなんだけどな。


「猫は箱の中、誰にも見つからない。」


生死すら分からない、猫の行方を知るのはほんの一握りの人間だけ。




永遠の道化を始めようか、古泉。












お前と、二人で。













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病みキョン。
結局何が書きたかったのかよく分からない。









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