旧パラフィリア
足りない。
足りない、足りない、足りない。
―――――でも、言えない。
(キスして欲しい、だなんて!)
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連珠盤に碁石に似た珠をひとつ。
碁盤と碁石で十分なはずなのにどうしてお前はわざわざ形から入ろうとするかな。
ボードゲームが積み重なった場所をふと見れば、今にも崩れ落ちそうな将棋盤にチェス盤、トランプにダイヤモンドゲーム、バックギャモン、モノポリー、人生ゲーム……これ以上は言わないでおく。
数々のゲームが不安定ながらに安定しながら重なっていた。
地震が起きたら危ないのは俺じゃないか?
「どうぞ、あなたの番ですよ。」
「ああ。」
俺は白の珠をまたひとつ盤の上に置く。
持つ石の色でルールが少々異なるとはいかにも古泉の好きそうなゲームだ。
綺麗な長い指が、珠を掴む。
盤から顔を上げたらやたらと美形な人物と目が合った。
何でそんなに嬉しそうなんだよ。
「あなたとこの部室で二人きり、だからですかね?」
「俺に聞くな。」
ハルヒは朝比奈さんと長門を連れて今日は買い物だそうだ。
先程、解散了承メールが送られてきた。
もっと早く送ってくれ、そしたら俺は早々に家に帰ってゆっくり眠れたというのに。
ぱち、ぱち、と盤上に珠を置く音だけが部室で響く音。
あまりにも静かで、この部室棟には俺たちしかいないんじゃないか、と思うほど。
もしかしたら本当にそうなのかも知れないがな。
古泉は少し迷うように指を口元に持っていった。
―――――やばい、
付き合い始めて約三ヶ月。
キスをしたのは一週間前に、一度だけ。
その先は勿論あるはずもなく、精々真っ暗闇の帰り道で手を繋ぐ程度の関係。
だからって愛されてないんじゃないか、とかそんなことを思ったりはしないわけだ。
これ以上はないだろうというまでの愛情表現を古泉から受け続けているからな。
そりゃ自信もつくさ。
『愛してますよ。』
キスの後の囁きが、耳の奥で蘇る。
少しだけ頬が熱くなるのを感じて、古泉から目線を逸らした。
これは危ないぞ。
「あ、僕の勝ちです。」
嬉しさを隠し切れない声が子供っぽくて可愛いと思ってしまった。
不可抗力だ。
連珠盤の上には五つ並んだ黒の珠。
久し振りの勝利じゃないか、お前。
「じゃ、帰るか。」
「そうですね。」
古泉は碁笥の中に乱雑に珠を納め、連珠盤ごとボードゲームのあるスペースに突っ込んだ。
今度整理しよう、じゃないといつか崩れるぞこれ。
「……どうしました?」
「あ、え!?」
(近い近い近いっ!)
顔を覗き込まれ、目が合いそうになったが故に顔を思い切り逸らす。
赤い。
絶対に今顔赤い!
視線だけを少し横にずらせば一度だけ触れた唇が目に入って。
「あの、」
「な、何も言うなお前は喋るな!」
床に座り込んで膝に顔を押し付け、司会から古泉の姿を消し去る。
ああ、どうしよう、今、すごく、
(キスしたい。)
「………ああもう!」
「へ、」
がっと右腕を掴まれて思わず顔を上げた。
「あなたは、可愛すぎる。」
俺よりも赤い顔が、目前に。
「こ、いずみ?」
「僕が何のために一週間も我慢したと思ってるんですか!」
すまん、話がつかめないんだが。
「そんな可愛い反応なんてされたら、我慢できませんよ。」
「ま、待て、何の話だ!」
急に変わった態度に焦って気付いてなかったが、いつの間にか俺は立たされ、挙句古泉に腰を抱き込まれていた。
「もっとゆっくり、進めようと思っていたんですがね……。」
顔が近付いて。
「ん、」
唇が、触れた。
それはすぐに離れていったが、…まあ、俺の欲は満たされたと言ってもいいだろう。
「予定変更です、キョンくん。」
「はい?」
まだほんのりと赤い顔のまま、古泉は笑顔を浮かべた。
その後?
そりゃあ、想像通りでしょうよ!
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は、恥ずかしい!
絶賛スランプ中です……。
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