Grito !


大きくため息をついて、僕は俯いた。
幸せの絶頂にいるはずの僕の気分は、完全に落ち込んでいて。

今日なんか涼宮さんにまで大丈夫かと心配されてしまった。
立ち上がった彼が発した言葉は『帰る』ただ一言で。



―――――彼と、喧嘩をしてしまった。



きっかけは彼が一方的に怒ったことから、そしてそれに僕が逆切れしてしまっただけ。


「キョンくん……。」


一週間もあなたとまともに話していません。
謝らせてもくれないなんて。


「久し振りにお前の口からその名前を聞いたな。」

「正確にはあんたの一樹くんじゃなくて、過去の一樹くんよ。」


僕の目前にいきなり現れた二人は、僕を置いて会話を始めた。
でも、そんなことは関係ない。

見覚えのある、けれど、違う二人。


そんな、はず。


「よう、この姿では初めまして、になるのか?古泉。」

「あたしもよね。今のあたしが迷惑かけてるわね、一樹くん。」


はにかむ笑顔も、仕草も違わない、彼の姿。
腰までのロングヘアーに黄色いリボンのカチューシャをした彼女も、また。


「涼宮さんと……キョンくん?」

「正解、だな。」


満面の笑みが向けられて、僕は一瞬たじろいだ。


「色々と説明してる暇はないのよね。だからとりあえず、ついてきてくれる?一樹くん。」

「え、あ、はい。」


僕の横で、成長したキョンくんが大きくため息をついた。










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「ごめんなさい、一樹くん。」


泣きそうな顔で朝比奈さん(大)が話すことは、信じられないことばかりで。
SOS団がまだ続いてることや涼宮さんが全てを知っていること、それぞれのことを名前で呼び合ってることも、それでさえも驚いていた僕には、あまりにも衝撃的過ぎた。


「えーと、い、……古泉、大丈夫か?」

「あ、一樹で構いませんよ?大丈夫です。」


頭の中を整理しよう。

僕が連れてこられたのは、僕がいた世界から十年後。
ちょっとした抗争が起こっていて、僕は銃弾を受けて自宅療養中らしいが、機関の中では死んだことになってるらしい。

だから、僕が身代わりになって抗争を止めてほしい。


……で、いいんでしょうか。


「ま、簡単に言えばそうよね。それだけ分かってれば十分だわ。」


ここは確か、日本の中のはずなんだけれど。
銃刀法違反って、いつ廃止になったんだろう。


「特別組織だからな、社員全員が銃を携帯してるし、いつでも発砲が許可されてる。
ま、今のところ外での犯罪は起こってないからな。被害者は内部の人間ぐらいだ。」


キョンくんは慣れた手つきで携帯を操作し始め(今よりも更に軽量化しているようだ)、誰かと連絡を取っている。
いつの間にか僕の前にいたはずの涼宮さんが真横にいた。


「一樹くん、キョンと喧嘩中よね?」

「あ、はい。」


どうして知っているんだろう、と思いながら返事をすると涼宮さんは片目を閉じて綺麗なウインクをした。


「すぐに終わるわ。あたしが保障するもの。」

「ありがとう、ございま、す?」


もしかしたらもうすでに涼宮さん(小)は僕たちの関係に気付いてるのかも知れないな、なんて思った。
ううん、それはそれで恐ろしい。


「と、言うことでコレ原稿ね、覚えて頂戴。一樹くんには大活躍してもらう予定だから!」

「予定じゃなくて確定、だな。」


キョンくんが呆れたように呟いたのを朝比奈さんは笑顔で見つめ、はっと動きを止めた。


「あれ、もう出発しますよね!」

「あ、はい。」


いけない!と声を上げて朝比奈さんは扉の向こうへと去って行った。


「もう出るんですか?」

「出来るだけ早い方がいいからね。あ、早く覚えないと間に合わないわよ。」


すみません、と答えて真っ白な紙を開いた。


「………。」

「一樹?」


何と言えば、いいんでしょうか。


「これを、言うんですか?」

「その前にスーツに着替えてもらうけどな。」


いや、それは構わないんですけど。
でもこの台詞は、あれ?

僕って今、十年後にいるんですよね?
十年で日本ってこんなに変わるものなんでしょうか。
そして僕もこんなに変わるものなんでしょうか。


パソコンで打ち出した字かと思えば、実は長門さんの直筆らしい。
ああ、じゃあ絶対にこの会話に持っていけるわけですね。

アドリブがいらないのは助かります。


しかし相手の台詞と行動、それに合わせた僕の行動まで書いてあるなんて、これはもう原稿じゃなくて台本レベルだ。


「あのー、僕の今の地位を教えてもらってもいいですか?」

「ん?言ってなかったか。社長だな、機関の。」


もうどう反応していいのかも分からない。
キョンくんは僕の反応がよっぽど面白かったのか、腹を抱えて笑い始めた。

十年の月日はあなたの神経を更に強くさせたようですね。


「出世したものですね。」

「頑張ればお前もこうなるさ。さて、行くぞ。今日の運転は有希か?」

「そうね、楽しみだわ。どんな無茶をしてくれるかしら!」


長門さん、あなたはこの十年でどういった性格を獲得したんですか……。










ああ、高校生のキョンくんに会いたいです。













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色々と、捏造。
続かない。









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