フェイク 3
「話を変えましょう。」
何故変える必要があるんだ、とは言わなかった。
言ったところで結果は目に見えているからな。
「風邪を引いた人に風邪薬だと称してビタミン剤を渡します。
そしたらその人は薬が効いた、と一日で回復しました。
……この事実を、信じますか?」
「信じない、と言ったらお前はもっと違う例を出すんだろう?信じるさ。」
そもそもがよく聞く話だしな。
ありがとうございます、と古泉は微笑む。
さっきまでの慌てっぷりはどこに置いてきたんだか。
「では話を閉鎖空間に戻します。
そもそも閉鎖空間内では怪我をすることなどありません。
建物が壊されても何も問題ないように、人間たちにも害はないのです。」
その話がどうやってさっきの話に繋がるんだ。
俺には閉鎖空間の知識が皆無に等しい。
故に、さっぱり分からん。
「しかし、人間の想像力は豊か過ぎる故に害を及ぼします。
想像妊娠などがいい例かも知れませんね。」
いつもにも増して回りくどいな、古泉よ。
「要するに閉鎖空間内で死亡するほどの大ダメージを受けてしまったら現実世界でも心配停止、に成り兼ねませんね。
実際、一名ほどそれで死んでいますし。」
と、いうことは。
「そうです、僕も一度、死にかけました。
あの方がいて下さらなければ死んでいたでしょうね。」
頭の中をぐるぐると回る、これは、忘れていた、記憶。
「現実じゃない、お前は死んでいない、傷だって痛くない、と暗示をかけるように何度も呼びかけてくれました。
お蔭様で、僕は生きているんです。
―――――ありがとうございます、神様。」
目の前が一瞬、真っ白に染まった。
一年前、閉鎖空間、忘れてはならなかった大切なこと。
思い出してはならなかったパンドラの箱。
封印した記憶。
あの閉鎖空間で、俺は禁じられた想いを抱いた。
―――――神は人間に、恋をしてはならない。
俺が決めたルール。
けれどもそれが、世界を守るための戒め。
人間に恋をしたあの日、俺は自分の記憶を封じた。
いつかそれが風化することを、信じて。
思い出せと願ったのは、気付かなければならなかったから。
俺は、
俺は記憶を封じても再び同じやつを好きになった。
「あれは、あなただったんですね。」
そうだ、俺が。
―――――世界を、見捨てるな。
あの声は、俺だった。
俺は世界を守らなければならない。
崩壊させては、ならない。
「なあ、古泉。……俺のこと、好きか?」
「え、あ、す、好きですよ!急にどうしたんですか?」
俺は古泉の頬にキスをして、そして笑った。
これが俺の出来る、最高の笑みだ。
有り難く受け取れ、古泉。
風が吹いて、髪が煽られて。
「ごめんな、大好きだから……、一樹。」
世界を、選ばなければ、ならないから。
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ねえどうか、かみさまをかわって。
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