フェイク 4


僕は授業中にも関わらず、廊下を走っていた。

鞄、は多分、屋上に置いてきた。
あの中には教科書ぐらいしか入っていないから問題はないだろう。



一年五組の後ろの扉を思い切り開けば教室中の視線が僕に集まった。

教師、はタイミングの悪いことに生活指導の教師だったがそんなことはどうでもいい。


「古泉くん!」


涼宮さんの前の席はぽっかりと空いている。


「彼について話があります。今すぐ部室に来ていただけますか?」


笑顔なんて作っている余裕はない。
教師の声には耳も傾けずに僕たちは教室を出た。


「涼宮さん、朝比奈さんを呼んで来て下さい。僕は長門さんを。」

「分かったわ。」








長門さんは事情を把握しているらしく、僕が先程と同じように扉を開けば、何も言わずにゆっくりと立ち上がった。


「早くしないと、間に合わない。」


主語がなくても通じる。
彼の、ことだ。





僕たちが部室に着くとそこには既に涼宮さんと朝比奈さんがいた。


「僕は急進派ではありませんが、緊急事態です。
涼宮さん、疑わずに聞いてください。」

「今日、誰もキョンのことを知らないと言ったことに関係があるんでしょう?
話して。全部、信じるから。」


彼はご丁寧に僕たち以外の人間の記憶から自分のものだけを消失させてしまったようだ。

彼のことだから明日には僕たちの記憶もなくなっているのだろう。


絶対にそんなことは、させない。




「彼は、神です。」






そして僕は話した。

彼について、涼宮さんの力について、朝比奈さんや長門さんについて、僕について。
彼女は黙って聞いていた。


僕の話が、終わるまで。


「キョンは、どうして急に消えたの?」

「…理由が全く、分からないんです。」


どうして彼は最後に笑ってくれたのだろう。
どうして彼は姿を消さなければならなかったのだろう。


「彼は、自分にルールを科していた。」

「ルール、ですか。」


長門さんは淡々と言葉を紡ぐ。


「今朝、彼の思考は全て情報統合思念体に流れ込んで来た。
全ての理由を、知っている。」

「有希、全部話してくれる?」


こく、と一度小さく頷いて。


「私も彼に消えてほしくない。だから、話す。」


彼女の人差し指が僕に向けられた。


「あなたたちの関係は、SOS団では公認。慌てる必要はない。」





……どういうことだろう。





公認?まさか、そんなことが。
涼宮さんが何の反応も示さないので、本当のことらしい。

いつの間に。


「彼は、神。自分は人間と恋をしないと決めた。
人間に恋をしてしまえば世界が崩壊すると考えた。

一年前、彼は恋をした。古泉一樹、あなたに。
だから神としての記憶を封印した。

そして半年後、彼は再びあなたに恋をした。
何度忘れても自分は変わらないのだと感じた。

だから彼は、自ら姿を消すことを決めた。」


ずっと俯いていた朝比奈さんがぽつりと呟いた。


「キョンくんは、古泉くんが大好きだったんですね……。」










僕の目か数滴の雫が零れ落ちた。













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あなたが、かみさまだとしても。









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