フェイク 5
「大好きです。誰よりも愛しています。
……だから必ず、連れ戻してみせます。」
涼宮さんに意味深な笑顔で彼について尋ねられたので、正直に答えた。
「妬けるわね。」
「隠す必要はないと分かりましたから。」
公認ならば堂々としてようじゃないか。
「あたしの力、ありったけ使ってやるんだから!」
「なら僕は縄で縛ってでも連れ戻しましょう。」
きっと、大丈夫。
絶対に連れ戻せる。
僕の体が、光に包まれるのを感じた。
―――――目を開けるとそこは閉鎖空間だった。
ただ、あまりにも僕が知っているものと違いすぎる。
感覚的に分かる、というだけで、視覚的には全くの別物だ。
建物も空も何もかもが色鮮やかで、吹き抜ける風は柔らかい。
人は一人もいないが、その代わり神人もいなかった。
彼女が意図的に発生させた閉鎖空間はこんなにも、美しい。
「キョンくん。」
そこにいるのでしょう、と呼びかけた。
風が、強く吹いた。
ああ、そこにいるんですね。
「帰って来て下さい。」
光が一つ、二つ、集まってくる。
蛍のような小さな光。
「涼宮さんに全てを話しました。
彼女は、受け入れて下さいましたよ。
そして、伝言を頼まれました。」
彼女はいつものように明るく笑っていた。
信じているのだ。
彼はきっと、帰ってくると。
「『神様が恋したぐらいで崩壊する世界なら、とっくに私が壊してるわよ。
世界なんてあんたより全然強いんだから、親がいなくたって平気よ。
だから戻ってきなさい、団長命令よ!』と。
朝比奈さんは帰って来たらお帰りと言ってあげなければと言っていましたし、長門さんも帰ってきてほしいと言っていましたよ。」
あなたが必要なんです。
あなたのいないSOS団は、成立しません。
「僕からは、そうですね。
あなたのいない世界に僕の存在意義はありません、と言っておきます。
愛してるんです。
あなたを失って、忘れてしまうくらいなら迷わずに死を選びましょう。」
だから帰って来て下さい。
僕はあなたがいなくては生きていけない。
光が、ふわりふわりと僕の前に集まり始めた。
「帰り、たい。」
「ええ、帰りましょう。世界が崩壊するなんて有り得ませんよ。
涼宮さんもいるのですから。」
淡い色をした光が人を象る。
「でも俺は、責任を取らないと、」
「その前に僕に責任を取らせて下さいよ。」
光の中から現れたのは、見慣れた彼の姿。
「何の責任だよ。」
「あなたを何度も恋に落としてしまう責任、ですかね?」
彼が漆黒の瞳からはらはらと零す涙は、宝石のように綺麗だった。
「馬鹿だろ、お前。」
「そんな馬鹿のところに、戻って来てくれるでしょう?」
そう言って広げた両手の中心に、彼は躊躇いながらも飛び込んで来た。
彼の体温を感じて、涙が溢れそうになった。
「仕方がねぇから戻ってやる。責任、取ってもらうからな。」
「それはもう、喜んで。」
僕は赤く染まった彼の頬に、一つ、口付けを落とした。
―――――お帰りなさい、愛しい人。
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かみさまだって、ねがいはありますよね。
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