I know


目の前でハルヒが笑った。

いつものような満面の笑みじゃない。
優しくて、暖かい、まるで母親のような。


どうしたハルヒ、お前はそんな風に笑うやつだったか?


「あたしが何も知らないと思ってた?」

「は?」


わけが分からない、と言うように聞き返した俺の反応は正しかったのだろうか。
ハルヒは楽しそうに笑った。

くすくすと、かわいらしく。

どんな心境の変化だ。
何か大変なことを考えてそうで逆に怖い。


「全部ね、知ってたのよ。
みくるちゃんが未来人で、有希が宇宙人で、古泉くんが超能力者で、あたしが神様だってこと。」


思考回路は正常に機能しているはずなのに、処理能力が追い付かない。



ハルヒは、何を、言っている?


「でも、機関とやらは勘違いしてるみたい。
みくるちゃんのとこも有希のとこも同じだと思うわ。」


ハルヒはくるりと後ろを向いて空を見つめた。

窓に遮られ、切り取られた狭い空。


「この世界は、美しいわ。あたしにはどうやっても造れない。」


まだハルヒはあの優しい笑みを浮かべているのだろうか。


「閉鎖空間って呼ばれてるんだっけ?
あれ、最大でも地球の四分の一までしか広がらないのよ。
無理矢理消す必要なんてなくて、勝手に消滅してくれるわ。」


部屋は徐々にオレンジ色へと染まってゆく。
この場に、未来人も宇宙人も、超能力者だっていない。

いるのは神様と、何も出来ない普通の人間。


「あたしに力なんてほとんどない。
神様って言われてるみたいだけど、そんなんじゃない。

あたしには世界は造れないし、壊すことも出来ない。
人を造ることも消すことも無理だった。」


俺にはただ呆然と話を聞いているだけしか出来なくて。


「心を読むことも出来なかったわ。
そんなあたしが神様なんて、笑わせるわよね。」


だからね、と振り返ったハルヒの顔は、いつもの何かを思い付いたときのような団長の顔だった。


「キョンには迷惑をかけるかも知れないけど、少なくとも今よりはマシな状況にしてやろうと思ったの。」


脈絡というものを誰かこいつに教えてやってほしい。

さっぱり分からない。


「もうあたしの目を気にせずに古泉くんと付き合えるようにしてあげる。」

「……っ!」

「バレてないと思ってたの?馬鹿ねぇ。
今のあたし、キョンのことはすっごく信頼できる友達だと思ってるわ。
でも前は好きだったのよ?気付かないわけがないじゃない。」


かたん、とドアが鳴った。
鍵はいつの間に閉めたのか、誰も入って来れないようになっている。





「次の神様が来たわね。」

「次……?」


ハルヒは俺の疑問には答えず、鍵を開けてドアを開いた。


「涼宮さん、何かご用事ですか?」


現れたのは古泉で、どうやらハルヒに呼び出されていたらしい。

目的は不明だが。


「大事なご用事よ!
……ねえキョン。あんたを鍵からは解放できないの。
だから神様を、譲ることにしたわ。」


状況を理解出来てないらしい古泉はそっちのけで、話は続く。




結論が、見えた。




「ハルヒ、……お疲れ様、と言っていいのか?」

「そうね、一応受け取っておくわ。
でもSOS団は永久に不滅で、団長も永久にあたしだからお疲れ様は早いかもね。」


次にその言葉を言うのはあたしが死んでからね、と言い残してハルヒは部室から去って行った。


「あの、僕には何が何だか……。」


そうだろうよ。



俺は古泉に抱き着いてほんの少しだけ笑った。


どうやらまだ苦労する日々は続くらしい。
どうするか悩むべきなのだろう。

けれど俺には、どうにかなるような気しかしなかった。
後のことはその時に考えればいいだろう。





今は、とりあえず。





「愛してるよ、新しい神様。」














状況の説明が先、かな?













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さあ何を願いますか?









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